暗い穴の中、何を考え、何を生きたか?

「死というやつはあっさりと近づいてくる」
実はちょうど1週間前、そう下北沢でのライブ前、楽器を担ぎながら、いつも通りわが家であるマンションの階段をおりていった。そう完璧な日常のはずだった。しかし異変は既に起きていたのだ。警察が集まり、ドラマとかでもよく見かけられる黄色いテープ。日常はものの見事に破壊された。
 (親しいわけではないし、むしろ嫌いだったが)同じマンションの住人が変死してたそうなのだ。この人はアルコール中毒、いわゆるアル中にかかっており、いつもおかしな様相で歩いていた。ぼくも絡まれる事はあったが、何をやっている人なのかは知らなかった。原因は肝硬変。人の不幸ってやつは恐るべきスピードで伝達される。普段はできるだけ関わらないようにしていた人たちがこぞって関わろうとする。原因を知るのに時間はかからなかった。みな、この悲劇に参加したいのだ。
 ライブが終わって帰ってみると、警察はもう居ず、1週間経った今ではこれは消化され、話のネタとなり、人々は日常を生き始めた。僕もその人々の一員である。決してその人の生き方は褒められたものではなかったが、人々は残酷なものである。
 彼女はそうアル中のおばちゃんだったのだが、昔キャンギャルをやっていたそうだ。輝かしい過去と無残な現在。「無常観」は常に現実にあるのだ。